ヘリコバクター・ピロリについて

ヘリコバクター・ピロリの正体

これがヘリコバクター・ピロリです。(以下ピロリ菌とします)ピロリ菌は人間の胃の中に住んでいる細菌です。へんな名前ですね。
 
ピロリ菌の正式名はHelicobacter pyloriというつづりです。[helico-] という言葉はギリシャ語の [heliko-] から来た言葉で、「らせん」「旋回」を意味しています。(ヘリコプターの「ヘリコ」と同じです)[bacter] はバクテリア(細菌)を意味しています。[pylori] は胃の出口(幽門:ゆうもん)をさす「pylorus」から来ており、この菌が胃の幽門部から多く見つかることに由来します。
 
1980年代に発見されましたが、この菌が胃潰瘍・十二指腸潰瘍の原因となっているということが、近年明らかになってきました。ピロリ菌は胃の粘膜を好んで住みつきます。胃粘液の下入りこんで胃酸の攻撃から逃れているのです。また、十二指腸の粘膜が胃と同じような粘膜に置き換わってしまった場所(胃酸から十二指腸を守るためにこのような変化をする場合があります)では、ピロリ菌が住みつくこともあります。

胃の酸度はpH1~2です。これは強い酸の濃度ですから、昔は胃の中に細菌は生きられないとされてきました。

ピロリ菌が活動するのに最適なpHは6~7で、4以下では、ピロリ菌は生きられません。ではなぜ、ピロリ菌が胃の中で生きられるかというと、秘密はピロリ菌の持つウレアーゼという酵素にあるのです。この酵素によって胃の中の尿素という物質からアンモニアを作り出し胃酸を中和するのです。ピロリ菌は自分の周りに中性に近い環境を自分で作り出すことができるので、強酸性の胃の中でも生きていられるのです。

ピロリ菌の恐怖

ピロリ菌の感染率(人口の何%の人が感染しているか)は国によってずいぶん違います。大まかに言えば、発展途上国で高く、先進国で低くなっています。特に上下水道の普及率の悪い所で高いとされています。(Graham, D.Y. : Gastroenterol Clin Biol 13 : 84b, 1989 より改変)
 
また、同じ国の人でも経済状態によって感染率が変わってきます。アメリカの白人の調査では年収が高い人の方が低い人よりも感染率が低いという結果が出ています。
 
そのような中で、実は日本人のピロリ菌感染率は先進国の中で際立って高いのです。
 
1986年に兵庫医科大学で行われた調査では、40歳以上では発展途上国型、40歳以下では先進国型の感染率を示しています。これは、当時40歳以上の方は戦後の衛生状態が悪い時代に生まれ育ったため、このような高い感染率を示したと考えられています。1998年の調査ではそのグラフが右に移動した形になっており、日本でも、衛生状態の良い環境に育った若い人たちの感染率は低くなっていることが示されています。

ピロリ菌の除菌療法

胃潰瘍・十二指腸潰瘍については、ついに日本でも2000年11月より、ピロリ菌の除菌療法が保険で認められるようになりました。(アメリカ、イギリス、フランスなど海外ではずいぶん前から認められていた国もあります)

ピロリ菌の除菌に成功すると、

・ 何度も再発を繰り返していた潰瘍の再発がおさえられる
・ 維持療法(潰瘍が治った後も、再発予防のために薬を飲み続けること)が必要なくなるなどの効果があります。

ただし、除菌の治療は中途半端でやめたりすると、ピロリ菌が薬に対して耐性をもち、次に除菌しようと思っても薬が効かなくなるおそれがありますので、必ず医師の指示通りに薬を飲むことが必要です。また、除菌治療は1週間ほどで終わりますが、その後も潰瘍の治療は一定の期間必要になることがあります。
 
ピロリ菌の除菌治療は「プロトンポンプ阻害剤(PPIと略します)+抗生剤(抗生物質)」という組み合わせで行われます。PPIは潰瘍の薬で、胃酸の分泌を強力に抑える働きがあります。抗生剤はいわゆる抗生物質のことで、菌(ピロリ菌)をやっつける薬です。PPIを一緒に使うことで胃の酸のために抗生剤が働かなくなってしまうのを防ぎます。抗生剤2種類を、PPIとあわせて使うことから「3剤併用療法(3ざいへいようりょうほう)」と呼ばれます。
 
現在保険で認められているのは、PPIにランソプラゾール、抗生剤にアモキシシリンとクラリスロマイシンという組み合わせで1週間、全部で50錠ほどを飲むことになります。

ピロリ菌除菌治療の副作用

胃潰瘍・十二指腸潰瘍であっても、除菌治療を行うかどうかは主治医の先生が判断されますので、ピロリ菌が検出されたからといって必ず除菌を行うということではありません。(患者さんによっては副作用が予測できる場合もあるからです)副作用で最も多く見られるのは「下痢・軟便」です。
 
症状が軽い場合には整腸剤などを併用することもありますが、ひどい腹痛や頻回の下痢があらわれたら、すぐに主治医に相談しましょう。他に、過敏症(発疹など)、肝機能異常、味覚異常などが出ることもあります。治療中、体調が普段と違うことがあれば、自分の判断で治療をやめたりガマンしたりせず、主治医に必ず相談するようにしましょう。

日常生活での注意

喫煙

タバコを吸うと、胃の粘膜に栄養を補給する血液の流れが低下し、胃粘膜の抵抗力が落ちてしまうなど、胃を守る「防御因子」に様々な悪影響をもたらします。まずは禁煙しましょう。

リラックスできる環境を

胃・十二指腸潰瘍はストレスの影響を受けます。実際、仕事熱心で真面目な人ほど、潰瘍になりやすいと言えます。仕事は、“少し気楽に、ほどほどに”を心がけましょう。また、入浴をリラックスの場にしたり、のんびり音楽を聴く時間をつくるなど、1日1回でもいいので、リラックスできる環境を整えることも大切です。

胃にやさしいお酒の飲み方

お酒は、少量であれば食欲増進やストレス解消に役立ちます。しかし、強いお酒をストレートで飲んだり、すきっ腹に飲んだりすると、胃が荒れることもあります。特にウイスキーなどは、水割り(濃度15%以下が望ましい)にして、おつまみと一緒に飲みましょう。おつまみとしては、ピーナツなどの消化の悪いものより、豆腐やチーズ、野菜、魚などの良質のタンパク質やビタミンを含むものがお勧めです。

適度な運動を続ける

1日中、家の中でゴロゴロしているとお腹もすかないし、食欲も出てきません。一方、適度な運動は、食欲を増進させるとともに、消化を助ける効果もあります。ウォーキングやジョギング、ストレッチなど、軽めの運動を毎日続けるようにしましょう。

睡眠をしっかりとる

心身をゆっくり休めるためには、睡眠を十分にとることが基本です。また、生活のリズムを整えることも、ストレスを溜め込まない秘訣。そのためには、就寝・起床時間を規則正しくしたいものです。胃は「第2の心(脳)」と言われるほどデリケートな器官です。胃をいたわるためにも、規則正しい生活を。

戻る


Copyright(c) 2012 大腸肛門.JP All Rights Reserved.