便潜血検査の恐怖

便検査とは

便の中の見えない血液を試薬で調べるのが便潜血検査です。食事で採った肉などに反応してしまう試薬を使っていた時代もありましたが、現在はヒトの血液のみに反応する試薬を用いています。

陽性となった場合は精密検査をすることになっています。しかし怖いのは大腸の病気があっても出血していなければ陽性とはならないことです!

早期の大腸がんやポリープでは出血により便検査が陽性になることは逆に珍しいのです。つまり、便潜血がもし癌により陽性になっているとしたら、その癌はもはや出血までしている進行癌の可能性が高いことになるのです。

また痔でも陽性になってしまいます。自分で自覚症状の無い痔の方の頻度はかなりいらっしゃるので、不必要なガンの心配、不必要な検査がおこなわれることになることも事実です。

「便検査」は簡単な検査なので広く普及していますが、精密検査を担当する内視鏡専門医が十分な数いないのが現在の状況であり、また不慣れな大腸カメラの挿入から患者様に苦痛を与えてしまい、「大腸カメラは痛い!」というイメージを植え付けてしまったことも事実なのです。

専門医としての考え

前述のような問題から大腸の専門施設(大腸を専門に扱っている施設は少ないですが…)が患者さんに便潜血検査を勧めることはまずありえません。特に大腸がんチェックにより大腸がんの心配が強い方は便検査でなく最初から精密検査をされることをお勧めします。もっとも信頼性の高い精密検査は大腸の内視鏡検査です。

2001年5月27日 朝日新聞 掲載記事
『進行がん、突然の発覚』

郵便受けに、はがきが1枚入っていた。「来た」。印刷された文字を急いで追った。「大腸がん検診の結果について異常は認められません」ああよかった。ふっと顔がほころんだ。定年退職した夫と、東京郊外で暮らす。65歳。父も姉も大腸がんで無くした。だからがんには人一倍、気を使ってきた。人間ドックは10年以上、毎年欠かさず受けてきた。4年前からは市のがん検診へ。「異常なし」のお墨付きがもらえれば、1年間は安心して暮らせるからだ。

昨春、別の病気で受診した病院で、思わぬことを告げられた。「血液検査で気になる数字がでている。消化器に腫瘍があるかもしれない」5ヶ月前のがん検診では異常無しだったのに。3週間後、精密検査の結果を聞きに行った。「大腸の進行がんです」そんな……。頭の中が真っ白になった。

入院、手術。抗がん剤治療も始まった。検診でなぜ、がんが見つからなかったのだろう。医師に尋ねてみてがく然とした。「検診でやった潜血検査では、出血しないがんは見つからない。なのに、みんな検査結果をそのまま信じちゃう」検診は万全だと思っていたのに。抗がん剤投与を終え、最近やっと体調が落ちついてきた。

「検診は大事だよ」医師である夫がみんなに勧めていたのを、千葉県の山口祥子さん(62)は、今も覚えている。夫は肺がん治療の専門医。自らも検診で、胸部のX写真の判定をしていた時期もある。「ぼくら夫婦、おたがいの誕生日のプレゼントにしよう」と毎年、それぞれの誕生日の月に人間ドックに入っていた。

3年前の春。夫が胸の下の痛みを口にした。検査をしたその場で末期の胃がんとわかった。半年前に人間ドックに入り、腹部のX線検査で「異常なし」といわれたばかりだ。短期間で悪くなる?医療ミス?でも、かつて検診に携わっていた夫は検査への批評を口にしなかった。その夫が力つきたのは、手術から一年四ヶ月後のことだった。

亡くなる前、一度だけ夫に問いかけたことがある。「悔しいね。見落とされて」夫は、こう答えた。「こんな思いをするのが自分でよかった。ほかの市民じゃなくて

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安心料のつもりで検診を受ける人は多い。だが「異常なし」の結果にほっとしていたら、わずか数ヶ月後に手遅れの病気が見つかった。そんな例が、あちこちでおきているのはなぜだろう。(くらし編集部・山之上玲子)

3年前、旧厚生省の研究班がまとめた「がん検診の有効性評価に関する研究」に目をひく数字が報告されている。がんがあるのに「異常なし」とされる割合が、胃がん検診で10~40%、大腸がんで20~30%あるというのだ。

「これは見落としというより、検査そのものの限界なんです」検診に携わる医師たちは、口をそろえる。検査の精度は検査方法によってちがう。だが詳しい検査であればあるほど、費用は膨らむ。検査の制度をあげると、病気でないのにひっかかり、二次検査にまわされる人が増えすぎる。検査方法は、その兼ね合いで決まっているのだ。

だが、受ける側は「検診さえ受けていれば安心」と考える。期待と実態とのずれが、検診の落とし穴になっている。

東京都墨田区の建築設計業、石井光一さん(51)は、健康診断をめぐる訴訟を、もう10年以上も続けている。33歳でなくたった妹の死が、いまも納得できないからだ。「胸が痛い」と訴え始めた妹は、会社の検診で「異常なし」と診断された。それから一月後、大学病院で「末期の肺がん」と宣告された。石井さんは妹の死後、会社などを相手取り裁判を起こした。だが一、二審とも敗訴。判決ではこんな考え方も示された。

大量のレントゲン写真を短時間に読影することを考慮すれば、医師に課せられる注意義務にはおのずと限界がある

最高裁に上告したが、判断はまだ出ていない。

同じような訴訟は、あちこちで起きている。医療事故に詳しい加藤良夫弁護士は「医師の責任までは問えない」という考え方に対し「もし限界があるのなら、あらかじめ説明すべきだ」と話す。

確かに、医療機関側は、検査の限界について十分は情報提供をしてきたとはいえない。「丁寧に説明すると時間がかかるし、経営への影響もつい考えてしまう」とあかす医師もいる。

三重県の笠間睦・倉本病院副院長も、「受診者が検査の意味を知らないことが、検診の一番の問題点」と感じている。検診で病気が見つかるケースは多い。厚生労働省は、昨年度からスタートさせた健康づくり運動「健康日本21」でがん検診の受診者を五割増やすことなどを目標に掲げた。だが、受診者に情報提供を勧める具体的な動きは見えてこない。

POINT!
胃がん・大腸がん検診で最も精度の高い検査は内視鏡検査なのです

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